涙の遺産相続

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     小さい頃から憎んでいた兄だったが、就職すると変わった。
     比べる必要がなくなったのだ。

     兄の結婚の後、私も結婚した。それぞれに家庭を持って幸せな日々。
     子供も出来て、従兄弟も仲がいい。

     何十年と経っていった。
     母が9月に亡くなって、父も母もいなくなった。

     そして、遺産相続。
     母が何としても一千万貯めると言っていたが、その通り一千万はあった。
     土地家屋も兄と同居している母の権利もある。

     兄が言った。500万円と土地とどっちがいい?
     結局色々調べて迷った結果。500万円の現金にした。

     かつて1個のケーキを分けた時の話。
     兄は「切るほうと選ぶ方とどっちがいい?」と聞いた。

     小さかった私は△のケーキを均等に切る自信がなかったので
     選ぶ方を選んだ。なるほど公平な話だった。

     今度は土地。でもこれは半分にしてしまうと価値がなくなる。
     それにもめ事が残るのは嫌だ。けれど何もなくなったら実家に帰り辛い。

     決断して500万円を受け取る事にした。
     兄が現金をくれた時の事だった。

     「これで終わりでないからね。もし、土地が欲しくなったら言いな。」
     「実家にいつでも帰っていいんだから。離婚するなら戻って来ていい。」

     私はビックリした。
     まさか。あの憎かった兄がそこまで妹の事を考えているとは思わない。
     涙が出た。本当は号泣したい程だった。

     お兄ちゃんが遊びに行くと、どこへでも連れて行く。
     それほど慕っていたのだと。思い出した。

     そして、そのように育てた父や母に感謝した。兄弟仲良く。
     いつも言っていたが、その通りになっていた。

     遺産はお金だけではなかったんだ。
     嬉しかった。ものすごく嬉しかった。
    hasemasako * 兄弟とは * 07:13 * comments(0) * trackbacks(0) * - -

    藁人形と五寸釘

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       むかしむかしの事。

       とても兄が憎かった。成績はクラスで一番。スポーツは万能。
       すべていいものは持って行った。性格以外は。

       毎日のように妹の私を「デブ・ブス・ドジ・マヌケ・・真ッ子。」
       と馬鹿にしていた。

       ある日のこと。当時養鶏場をしていたので藁小屋があった。
       その藁小屋で遊んでいると、ひょんなことに人形が出来た。

       ???これって。藁人形だぁ。そうだ。これに
       五寸釘を打てば・・。

       おとうちゃん。五寸釘ない? 五寸釘はないけど四寸釘ならある。
       四寸釘で効くのかなぁ?と言いながら藁人形をかざした。

       すると、近くにいた兄が騒ぎ出した。
       おかあちゃーん。真子がオレを呪おうとしている!

       バカ。お前なにやってんの?そんな事したら自分が呪われるんだよ!
       え?そうなの?じゃ止めた。だって憎かったんだもん。

       四寸釘じゃ。効かないかもね。それに丑三時なの?起きられないし。
       怖いから。いいや。

       
      hasemasako * 兄弟とは * 06:48 * comments(0) * trackbacks(0) * - -

      守銭奴

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         かつて私は守銭奴だった。

         憎かった兄を見返してあげる方法。
         お金を貯める事だった。

         毎月23日の銀行のサービスデーに行くと風船をくれたり、景品がつく。
         それを楽しみに毎月のように千円を貯金しにいった。

         小学校六年生になり、お年玉も含めて88,000円貯まったので、12,000円
         足して10万円の定期預金にしてもらった。

         兄はというと毎日遊びほうけて。キリギリス。
         私は小さいながらも中学生になると兄を相手に高利貸しをしていた。

         金利は10日で一割。
         1万円を夜に貸して、やっぱり翌日返すと言ったので、
         100円頂戴!と言うと。なんでだ。と兄が言った。

         一晩経てば一日経過したんだから、利息を払うのは当たり前でしょ。
         母も、決めた事なんだから守りなさいと言う。

         もちろん、貸す時には借用書を書かせる。
         利息もちゃんと頂く。やくざの世界でまかり通っていた十一(といち)
         10日で一割の利息。

         兄が借りたお金と利息を払う時。一番優越感に浸る時だ。
         「デブ・ブス・ドジ・マヌケ・・・真子から借りるんだから。」
        hasemasako * 兄弟とは * 16:48 * comments(0) * trackbacks(0) * - -
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